2017.06.06

【WWD JAPAN】SNS戦略のトップランナー、ナカヤマン。が語る「インフルエンサー時代」の未来

今やファッション企業のマーケティング活動に不可欠になったSNS。「ジーユー(GU)」から「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」までさまざまなブランドのデジタル施策を手掛けてきたドレスイングの最高経営責任者(CEO)でありデジタルクリエイターのナカヤマン。は、SNS黎明期から活躍してきたこの道の第一人者だ。その彼がドレスイングの“完了”を決意したという。現在、影響力の大きいインフルエンサーを通じて情報を拡散するSNS戦略が主流だが、「2017年以降、市場は新たな転換期を迎えることになる」と語る。そこで、SNSの未来と、自身の施策について話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):ドレスイングを“完了”するというが、具体的にはどういうことか?

ナカヤマン。:ドレスイングは、ファッション業界に特化したデジタルエージェンシーとして立ち上げたもの。2007年の設立当時は水と油のようであった「ファッション」と「IT」を、どうしたら理想的に混ぜ合うことができるのかを追求するため、“ドレッシングする”という意味を込めた。17年5月30日でちょうど10周年を迎えたが、設立時にイメージした役割は全うしたと感じている。そこで、ドレスイングを“完了”しようと決めた。その代わりにロサンゼルスに会社を設立し、新たなステージに踏み出したところだ。整理がついたところでドレスイングはたたむ。昨年から考えて、悩んで、次の物語が見えたので、ようやく決断できた。

WWD:新会社については後ほど詳細を聞くが、まずはドレスイングでは何をしてきたのか総括すると?

ナカヤマン。:ドレスイングの流れが作れたのは08年。SNSのコンサルティング業務を開始したことが大きい。当時はツイッターの黎明期で、主なクライアントはマークスタイラー、ワールド、三陽商会などのアパレル企業だった。読者モデルがディレクターを務めるリアルクローズブランドが多く、彼女たち「個人」の発信力を「組織」に転換して、より「ブランド」へと進化するお手伝いをした。例えば、個人ブログ経由で形成されていた売り上げを、ツイッター担当などを設けて、役割、責任、規模に耐えうるスキームを構築した。12年にはウェブ制作の業務を開始。フランスの某トップラグジュアリーブランドから依頼されたバイラルキャンペーンが制作第1弾となった。すでにインフルエンサーを起用したもので、当社が得意とする「企画→制作→ローンチ→バイラル施策運用」というワンストップ型プロジェクト受託のスタイルを取っていた。その後2年で、ウェブ制作、アプリ制作、イベント用のデジタルインスタレーションの制作まで業務を拡大し、14年にはマスブランドの「ジーユー」とインスタグラム施策「ジーユー タイムライン(GU Time Line)」に取り組むことになる。

WWD:SNS上、特にインスタグラム上に投稿された画像をカタログのようにしてまとめサイトを作った「ジーユー タイムライン」は、インスタグラムの流行を先取りするとともに、“外に飛ばない”と言われるインスタグラムのビジュアルをECと連携した意欲的な試みだった。

ナカヤマン。:14年当時、インスタグラム市場はまだ超ニッチだったが、7年間SNSでメシを食ってきた立場として、何か先手を打っておきたいという予感はあった。ただ、早過ぎても結果が出ないリスクもある中で、インスタグラム市場の成長と共に「ジーユー タイムライン」が軌道に乗ったのは、完全に「ジーユー」の采配であり、チャレンジ精神にあったと思う。「当たり企画になるはず!」と、信じて施策を支持していただいた。結果、目的としていた「売れるデジタルカタログ」が実現し、今では世界中で起用されている「インスタグラムの投稿から直接買える」スキームの元祖となった。また、「ナイロン ジャパン」など雑誌の表紙やテレビ番組までをチャネルとして起用。デジタルプロモーションとしては例を見ない多岐にわたる展開ができた。当社とインフルエンサーとのコミュニケーションもこの頃から本格化し、共に成長してきたメンバーは、今ではラグジュアリーブランドのプロジェクトにも起用している。

WWD:ラグジュアリーブランドのクライアントが増えていった要因をどう分析している?

ナカヤマン。:これまで、「ルイ・ヴィトン」「グッチ(GUCCI)」「ディオール(DIOR)」などとご一緒しているが、15年後半から急速に変化してきた。インフルエンサーマーケティングの市場が全世界的に不可避なレベルまで成長したことが大きい。SNS事情は各エリアで異なるため、ローカルごとのデジタル戦略が必要になる。そんな中で、「リアルクローズブランドと試行錯誤を繰り返してきたドレスイングだけが、SNSに関して実用的なノウハウを持っている」とクライアントに言っていただけたことがある。結果的に“タイムマシン戦略”に近い流れができた。つまり、リアルクローズで培ってきたノウハウや戦略を、必要とされた瞬間から最新バージョンの状態でラグジュアリーブランドに投入できた。15年時点で制作のクオリティーもブランド本国のチェックに耐えられるレベルに達していたことも幸いだった。

WWD:今年1月の「ルイ・ヴィトン」の案件では、協業相手のチャップマン・ブラザーズのアートワークを元に、テーマであるアフリカの動物の世界に迷い込んだような動画を撮影できるインスタレーションを制作し、SNSで拡散されていた。

ナカヤマン。:「ルイ・ヴィトン」で制作したデジタル・インスタレーションもそうだが、一般的にコンテンツの中心にパワフルなアーティストが介在することは理想的だ。ラグジュアリーブランドの強みの一つに「アート」や「アーティスト」との結びつきがある。「グッチ」もアーティストとコラボレーションしているし、「プラダ」や、「ルイ・ヴィトン」を擁するLVMHグループ、「グッチ」「サンローラン」などを擁するケリングなどは、美術館を保有している。デジタルでも生きる最もパワフルなコンテンツの一つはアートだ。ラグジュアリーブランドが自らの強みとしてアートをコンテンツに用いることは、これからさらに増えるだろう。

 

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